大多数の方は、ニキビといえば真っ先に、顔にできているところを思い浮かべると思います。実際、皮膚科を訪れるニキビの方々の多くが顔のニキビに悩んでいます。
ニキビは毛穴に起こる病気ですが、ただ「毛穴があればニキビができる」という訳ではありません。毛穴には皮脂腺という皮脂を分泌する器官が開口しています。この発達度合は身体の各部位、そして個人により違いがあります。ニキビは、皮脂腺が発達しているところにできやすい傾向があります。その代表的な部位が顔になります。
しかし、一言で「顔のニキビ」とは言っても、大きく分けて2タイプあることをご存じでしょうか。
皮脂腺の発達、皮脂の分泌過多と強く関係するのが、いわゆるTゾーンにできるニキビです。Tゾーンとは、おでこ〜鼻〜あごにかけてのT字のエリアです。
この部分は、思春期に分泌が盛んになる成長ホルモンの影響を受けます。成長ホルモンにより皮脂腺が発達しはじめ、皮脂の分泌が増加します。よって、Tゾーンニキビは、思春期(10代前半から後半)、青年期(10代後半から20代)にできやすい箇所と言えます。
皮脂分泌が盛んな肌は、脂性肌、あるいはオイリースキンとよばれ、皮脂分泌は男性ホルモンの働きによるものなので、男の人はどうしても皮脂分泌が過剰になりがちです。
でも顔の脂が多すぎるとテカリ顔とか、脂ぎった顔とかいわれて、一般的にあまりよい印象はありません。
このように脂の浮いた顔は見ため的にもいまいちなだけでなく、脂のために空気中のゴミが付着しやすくしっかりと汚れ落としをしないと、毛穴を詰まらせたりして他の肌トラブルに悩むようになったりすることがあります。
さらに酸化した脂が発する臭いが加齢臭の原因のひとつになっているとあっては、男性であってもスキンケアはおそろかにできません。
日々のちょっとしたスキンケアをするだけでも肌は変わってきます。今まで何もしていなかった男性は基本のスキンケアから始めましょう。
とにかく皮脂をよく落とし、肌を清潔に保つことです。洗顔には、皮脂を落とす作用の高い石鹸や、殺菌効果のある石鹸を有効的に使用します。その際に、汚れをしっかり落とそうとしてゴシゴシ強くこすることは、逆効果となるため厳禁です。
また、日焼けも毛穴を詰まりやすくします。特に、Tゾーンは紫外線が当たりやすい部分なので、紫外線対策が大切です。
屋外でのスポーツなどをする際のUVケアはもちろんのこと、ちょっとした外出の時も、日焼け止めクリームを塗る、帽子をかぶるなど、徹底していただきたいです。
20代(青年期)半ばからよく見られるのが、いわゆるUゾーンにできるニキビです。Uゾーンとは、耳の前〜あご〜もう片方の耳の前を結ぶU字のエリアであり、フェイスラインとも表現されます。U字の先端がさらに伸び、ニキビがこめかみにまでおよぶ場合もあります。
ほとんどのUゾーンニキビは成人してからできることが多いため、「大人ニキビ」とも呼ばれています。このタイプのニキビは、成長ホルモンによりできるものではありません。いくつかの原因が複雑に関与しているのです。
Uゾーンニキビは、様々な原因が複雑に絡み合ってできると考えられています。その主な原因は、この2つ。
■ ホルモンの影響
■ 皮膚の乾燥
多数あるホルモンの中でもニキビと関係しているのは、この3種類です。
・ 副腎皮質ホルモン
・ プロゲステロン(黄体ホルモン):女性の性腺ホルモンの1種
・ アンドロゲン(男性ホルモン):男性の精巣、女性の卵胞から分泌される
これらは全てステロイドホルモンの仲間です。ステロイドホルモンは、ニキビの原因となることがあります。また、プロゲステロンは、女性の生理周期により分泌が増減し、Uゾーンに限らずニキビを増やしますが、ストレスにより増えるホルモンはUゾーンにニキビを増やします。
特にUゾーンは、男性のヒゲが生える部分にあたることからも分かるように、男性ホルモンの影響を強く受けやすい箇所なのです。これらのホルモンは、毛穴の入口を硬くし、皮脂の分泌も増加させるため、ニキビの発生につながるのです。
また、乾燥も皮膚の柔軟性を低下させ角質を硬くし、ひいては毛穴からの皮脂の排泄を妨げてしまいます。
2つのタイプがある顔のニキビ、それぞれ原因が違うため対処法も異なります。特に、大人ニキビであるUゾーンニキビは、皮脂分泌がとにかく増える思春期ニキビと違い、様々な原因が複雑に絡み合って起こります。
まず第一に問題となるのが、ストレスです。前述のように、ストレスによりホルモンのバランスが崩れるのはもちろんのこと、免疫力も低下させるため、化膿したニキビが増えやすくなります。ストレスには、大きく分けて「肉体的ストレス」と「精神的ストレス」の2種類がありますが、いずれもニキビの原因と成り得ます。
そして、皮膚表面の乾燥も原因となることがあります。乾燥は、角質に十分な水分が行き渡っていない状態です。この状態に対しては、保湿が必要となります。ただし一言で保湿と言っても、保湿剤なら何でも良いという訳ではありません。油分の多い保湿剤は避けるようにしましょう。
顔のニキビのタイプと特徴、ご理解いただけましたか。ご自分のニキビはどのタイプでしたか。
思春期ニキビは、成長に伴い何年も続くことがあり、大人ニキビは数々の原因が複雑に絡み合い、改善しにくいことが多々あります。セルフケアによってなかなか効果が見られない方は、ぜひ皮膚科を受診していただきたいと思います。